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おんがくとピアノのことを書いています

大人からピアノを独学で始められるか

大人からピアノを独学で始めることができるか?ネットで動画を見たり情報をとれる今の世の中ではじゅうぶんに可能だと思います。とはいえ、最初に短期間や単発のレッスンを受けるメリットもあると思います。

 

バーベキューで、炭にじゅうぶんに火がつくまでに、火の燃焼を助けるジェルみたいなものを炭の上にかけて、火をつけることがあると思いますが、初期段階で受けるレッスンは、それと同じ「プライマー効果」があると思います。

 

ただし、大人のピアノをじゅうぶんにガイドしてくれて、レッスン料もリーズナブルな先生を見つけられるどうかが、ネックになってくると思います。

 

大人の生徒のスペックには大きなばらつきがあると思います。大人でピアノをやりたいと思うのには、人それぞれ、いろいろな程度の夢や憧れや目的があってのことで、各自のビジョンに特徴があって、それが先鋭化されていると思うからです。

 

社会人としてのバックグラウンドも影響します。会社で働く人は、日々の仕事で身についた文化(社風や慣習)やビジネス的な思考(合理性やスピード感や交渉術)や視点(コスト感覚や成果主義)、そして仕事の分野の専門知識(工学、営業、分析、リサーチなど)を、鎧のようにまとっています。そして、時には大変な仕事をやり遂げてきたというプライドを、誰しも持っています。

 

仕事以外の生活でも、そのようにして培った価値観や知識やプライドに照らしてベンチマーキングしながら、人は品物やサービスを選ぶものです。何かを習う時もそうです。

 

それを迎え撃つピアノの先生たちの鎧は「人に教えるノウハウ」ですが、事業や商売に所属してその中核や歯車として働くノウハウとは違います。

 

さらに、ピアノの先生の種類によって、大人の生徒への対応能力に大きな違いがあると思います:

 

主婦で子育てをしながら自分の家で子どもたちにピアノを教える先生は、子どもを持つ親にとって、「お母さん先生」という安心感があり、必然的に子供の生徒さんが多くなると思います。逆に、大人の生徒を教える機会が乏しくなり、また先生本人の生活や考え方が子ども中心の目線であるため、社会人の生徒に対応できるノウハウが乏しいと思います。

 

また、育メンの旦那様や代行サービスで家事や子育てを外注できる先生を除いて、生活のなかで自分の練習時間を十分に確保してコンサートで実演するのも大変だと思うので、演奏家としての実地の経験が乏しくなりがちです。スキルアップの勉強のための時間をとるのも難しいと思うので、レッスンの内容が画一的になる可能性があります。ただしレッスン料は高くないと思います。

 

ピアノをやりたい社会人のなかには、特定のジャンルや時代や作曲家への興味が先鋭化している人が多いとおもいます。たとえば、バッハが好きで、有名なピアニストのコンサートに足しげく通って演奏を聴き比べたり、バッハの伝記を読んだりしているうちに、自分も弾いてみたい!と思ったような人の、肥えた耳と知識欲を満足させながらピアノを教えてくれる先生はいるのでしょうか。

 

ピンポイントの対象領域を持っている大人は、その分野が専門の音大の先生やピアニストに習っているようです。ただし月謝はそれなりに高いと思います。

 

個人的な経験ですが、私がやりたいジャンルを弾かれる、かなり名のあるピアニストさんに1回だけ習ったことがあります。1回だけになったのは、レッスン料を含めて私にはとても払いきれない高級な道楽になりそうだったからです。1回1時間のレッスン料が歌舞伎座の一等席より高い値段で、レッスン料からしてそんなですから、数分の時間枠を購入して出演する発表会のお値段も私にとってはサプライズで、また現役のピアニストさんなので、コンサートがあればチケットを買う必要もあるんだろうなぁと思ったり、私の経済力ではとても続かないと思いました。こういった現役の方に習う場合は、私個人のピアノスキルの上達というよりも、そのピアニストのファンというかお客さんというか、パトロンのひとりになる意味あいのほうが強くなるんだろうなぁ、と思いました。レッスンの内容は、曲の解釈と強弱などのつけ方の指導と、音を出す際の技術的なアドバイスが2個と、メンタル面の励ましで、内容自体はよかったと思いますが、レッスン料は内容プラスその方のお名前の値段だったと思います。その方は、ピアノ演奏、パフォーマンス、顧客維持努力も含めて、さすがにプロだと思います。

 

もちろん、それほど高額でないピアニスト先生もたくさんいると思いますが、現役の演奏家に習えば、コンサートのチケット購入などの追加負担のプレッシャーはあると思います。チケットを買って聴きに行く価値のある演奏家かどうかが、習う際の判断のポイントになるのではないかと思います。

 

大手の音楽教室の大人のレッスンも、それなりの価値はあると思います。グループレッスンは生徒個人の希望がどれだけかなうかわかりませんが、個人レッスンもあるし、体験レッスンもシステム化されているし、先生個人と生徒の間に企業が介在しますから、先生に対する義理人情にとらわれることなくピアノを習い始めたり中止したりとビジネスライクにできるので良いと思います。

 

お母さん先生、ピアニスト先生、音楽教室の個人レッスンを体験して思うのは、自分の希望にピッタリ合う先生は絶対にいないということです。ハズれた粗忽者の私は当然ですが、まっとうな人にとっても、その人の価値観や、好みのジャンルや、ピアノをやりたい目的や、ピアノを弾くのですから身体能力も含めて、全部の要素を考慮したレッスンを、リーズナブルな価格で提供して、しかも上達させてくれる先生というかサービスは存在しません。

 

ただ、ピアノを始める段階でなんらかのレッスンを受けると、ガイドを付けたというそこそこの安心感ができますし、単発や短期レッスンで何人かの先生に習ってみると、ピアノの練習方法のベンチマーキングができるし、ピアノ教育業界の経済の回りかた、つまり生徒(お客様)からの収益の上げ方も少しわかると思うので、利用者としての賢い使い方の勘どころができてくると思います。働いて稼いだ貴重なお金を、どのようなサービスの対価として気持ちよく使いたいかを考える機会になります。

 

ピアノでも何でも、何かのスキルを得るためには、自分で試行錯誤して自分で気づいて工夫して改良しながら少しずつマスターしていくものだと思うので、先生に習っても、動画や本で独学しても、最終的には自分で判断しながらやっていくんだと思います。

 

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